___ねえ、私たちは大きくなったらどんな人になるの?
みんなが辛い思いしてる。みんなが悲しい思いしてる。そんな時代のなか。
私たちは、一体この時代に何ができるの・・・?
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File:1
ウイルスと銃3
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「あんた、あれほど気をつけろっつたのになにみすみす逃してんのよ!!」
若い女の子の声が爆発した。
歳は16,7ほど。小柄な体に大きい深い青の瞳をもったあどけない顔。そして青味がかかった黒いミドルヘアーを怒り任せて振り回してた。
「だぁ~かぁ~らぁ~、俺は止めようとしたのにあの馬鹿刑事が突っ込んできたんだよ!!」少女に怒鳴られた蘇芳も負けずに荒い声で言い返す。
「他になんか手があったはずでしょ?待たずに男なら突っ込みなさいよ!!女々しいっ。」
「あのね、その手をあの馬鹿刑事が使ったから逃がすとこだったの!!男だからとかなんとかっつー訳で突っ込んだ奴は馬鹿なんだよ。馬鹿。」
「あんただって馬鹿のくせに!!」
「な、ちょっ、阿曇!さっきの言葉取り消せ!!」
「言ってしまった事は、取り消せません。ついでにコレは真実なので、偽る事は出来ないのです!!」
「まぁ、まぁ、二人とも落ち着いて。」二人の間に少年が割り込んできた。笑っているがちょっと困っている。
「あぁ、もう!ラオが割り込んできたら決着がつかねぇ。」蘇芳は阿曇との言い合いを打ち切った。
歳は18、9歳。がっちりめの体に右に2つ長方形の傷テープを付けた顔と緑の瞳。短めの黄土色の髪は作業中邪魔にならないように太いヘッドバンドで上げられてる。穏やかな、でもちょっと困ったような表情を浮かべた少年は名をラオという。
「はぁ、こんないつも口喧嘩してるカップルなんて前代未聞やで。」
なまりを持った口調を持つ少女が阿曇の肩をぽんと叩く。歳は17歳位。ラオを女にしたような外見だ。ただし彼女は小柄で、髪の色はもっと濃い目で、ミドルヘアーを一部上げて結んでる。そして頬にテープは無い。少女は名をラウといい、ラオの妹だ。
ラウはやれやれ、と頭を軽く振り、そして付け足す。
「でも、こっちが気持ち悪いほど仲ええんやな、これが。」ため息混じりに言った。
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その4時間前―――――――
ミズキは連行され、ある警察署で尋問されていた。
彼は定期的に彼が密造していたウイルスを何者かと金と交換してたので、警察は彼を尋問して交渉人たちを捕まえるつもりだった。しかし、ミズキは一向に警察の問いに答えようとしない。既に午前4時30分。ミズキが蘇芳に誘き出されてから二時間程が経過していた。ミズキは交渉人の名前を言わず、かわりに腹減った、疲れた、眠いからベッドにつれてってくれ、トイレはどこだ?、こっから出せやコラ、等等要求ばかり言って警察をイライラさせていた。普段なら警察も辛抱強く答えるのを待つが、寝不足な上に生意気なミズキの態度に切れる寸前だった。蘇芳と戒もそこにいた。彼らは警察以上に寝不足でおまけにメシア本部に帰ったら帰ったで仕事がどっさりあった。
そう。彼らは普通の警察とは違う。
10年前、20年に亘って起こった世界戦争がやっと終戦した時、今までばらばらの国々だった世界が二つにまとまりそれぞれ帝国と称するようになった。こうして世界がまとまる事で権力、名誉、そして国の領土を広げるための戦争は防ぐ事に成功した。
が、20年という戦争に費やされた期間はあまりにも残酷で、世界中にいろいろな問題を引き起こしていた。不景気、人口の低下、大地に残された戦争の痕、沢山の孤児、等。でもその中で一番困ったのは戦時中に出てきた無数の過激派だった。彼らはもともと争いを好み、戦争は無駄だの、暴力だけで権力や地位をつかむのは情けないだの、そんなもっともな「現代」らしい道徳を持った社会を嫌い 、そこから独立して自分たちだけの国を造ることを望んでいた。そんな彼らは戦時中組織を組み、戦争に参加する代わりに自分たちの国を持つことを望んだ。そんな過激派を受け入れ、国を与えることを約束した国が3つあった。しかし、戦後彼らは帝国の一つの小国となったので、過激派たちの願いは叶わず、逆にもっと彼らを荒立たせた。彼らは世界中から仲間を集めて自分たちの国をとるべく世界中を攻撃し始めた。彼らは自らをこう呼んだ。「デストロイヤー」つまり破壊者と・・・・・・。
そんなデストロイヤーを阻止するべく二つの帝国は一つの新しい組織を造った。それは帝国内の選りすぐりの者を選んだ特殊中の特殊警察で、むしろ半警察半軍といっていいものだった。その組織は世界中に広がり、それぞれの居場所、つまり本拠は極秘にされている。 人々は彼らをこう呼んだ。「メシア」つまり救世主と・・・・・・・・・。
「んだから、飯を食わせろ。そして、寝かせろ。そしたら話してやっても良い。」ミズキが言った。
「あんたねぇ、警察がそこまで阿呆だと思ってんの?」刑事がイライラしながら訊いた。「そんな簡単にあんたに上手い口実を考えさせる時間与える訳ないじゃないか。」
「・・・・・・刑事、ちょっと俺と戒だけを残して部屋を出てくれないか?」蘇芳が言った。
「ふん。また尋問したって飯食わさんとびた一銭もやらんぞ。」刑事達が部屋から出た後、ミズキが蘇芳に言った。
蘇芳はミズキをこの上ない冷酷な毒々しい目で睨み戒を手で招き寄せた。戒は部屋の隅に置いておいた脇差を手に取り、脅すようにゆっくりとその鋭い刃を光らせながら鞘から抜いた。鞘から現れた白銀の刃がギラギラ光る。ミズキはそんなもの、と澄ました顔でじっと見たが、間違いなく額から冷や汗が噴出していた。
「アーグリブズさん、貴方確か今年で24歳でしたよね・・・・・。」蘇芳が机に腰をかけ、ハンドガンを脅すようにチャキッ、チャキッ、と鳴らした。
「これからやりたい事は何ですか?アーグリブズさん。」
「俺のウィルスを帝国中に広め、人々を脅かす事だ。」ミズキは冗談ぽっく言った。「そして俺は社会の脅威となって上に立つ。世界征服も夢じゃねーよ。」
「そんな答えを訊いてるんじゃないんですよ。わかりますね?」蘇芳は戒に目をやり、戒が脇差を構えて近寄った。「自分が成し遂げたい事って、何ですか?」蘇芳はゆっくり訊いた。
「さあな。てめぇに言ってやる義理はねぇよ、ガキ。」ペっと唾を床に吐きながらミズキは憎たらしく答える。
蘇芳はゆっくり瞬きをしながら、訊いた。
「貴方は死が怖いですか?」
その言葉を合図に戒がぐっと脇差の刃をミズキの喉元に寄せた。ひっ、と小さな悲鳴と上げ、ミズキは目を見開いた。恨めしそうに刃と、戒と、そして自分を冷たく見詰める蘇芳の目を睨む。ミズキは直ぐに二人が何をしようとしているか承知した。彼らはミズキを脅して口を割らせようとしている。そして彼は拷問に耐えれるような度胸も根性も無い。
「さぁ、アーグリブズさん。そのご様子では俺達が何をしようとしているか解っているようですね。俺達は出きるだけアンタを傷つけたくないし、このまま親玉を逃す事も出来ない。さぁ、話してください。これは貴方の身のためでもあり、そして俺達の首のためでもある。」
「わ、解った。話すからその刃をのけてくれ。畜生、我ながら女々しい。」ミズキは喘いだ。
「それは出来ません。少し心地悪いかもしれませんが、どうぞ、続けてください。」
ミズキは悪態をついたが、それ以上何も言わなかった。何故ならば戒が促すように刃をもう少し喉に食い込ませたからだ。
「1ヶ月前のことだ。俺の元にウィルスを創り、それを一週間に一度定期的に渡せとの依頼が来た。 」ミズキは飛び跳ねるように口を割った。そして続ける。「実際何処のどいつだかわからねぇ。おいっ、そんな目で見んなよ恐ろしいっ!」蘇芳が思いっきり眉間に皺を寄せ睨んだのを見て、ミズキは慌てて言った。
「という事はアンタ取引相手のこと何にも知らないんだな・・・? どうしようか、蘇芳。処分しようか?」戒がミズキの後ろからさらりと言い放った。
『我が相棒ながら嘘でも怖いねぇ・・。やれやれ。こんな事して・・今日は書類の山が待ってるな。ついでに上司の愚痴付かねぇ。一日で一気に老けるよ。』蘇芳は状況を横目で見ながら思った。
「ちょっ。待てよ。何言ってんだよ?!!あんた等一応警察なんだろ?いくらなんでもそんなことしたあんた等刑務所にぶち込まれるんだぞ?!!」ミズキが絶叫した。
「最近の犯罪者は話がわかって良いな。まあ、今アンタを斬り殺すか撃ち殺したりしたら直ぐに現行犯で刑務所に入れられるし、職も奪われる。」蘇芳はミズキのリアクションを楽しみながらミズキの顔を見てニヤニヤ笑い、戒はお決まりの脅し文句をさらりと言い放つ。
「でも、アンタを今此処で殺らなくても警察に筋の通ったでっち上げた理由を言えば俺と蘇芳だけがアンタを車で連行し、そのまま署へ行かず、山奥か、そんな人気が無い場所でアンタを処分すれば良い。その後適当な場所でわざと車をぶつけて事故に見せて、本部や警察には事故の際アンタはまんまと逃げおおせた、と言えば警察はすんなり信じるし、後でアンタの死体が見つかっても交渉人の奴らか他のアンタのくだらない悪巧みに関わった奴等に殺されたと思うだろう。誰もまさかこの都市を守る善良なメシアが殺しとは夢にも思わないだろう?」
そう冷酷な事を言い放って、戒は冷たくクククと笑った。その表情はまるで怯える獲物をじっと見据える獣の様だった。
「ま、そういう事ですよ。アーグリブズさん。こっちには色々計画があるって事です。下手をすると逃げるどころか身も子も残りませんよ。」戒の後を受け継いで蘇芳が言った。「そうなる前に全て吐く事をお勧めしますね。もう一度言います。これは彼方の身の為でもあり、勿論俺達の首の為なんです。」
「あんたら狂ってる!!正気じゃなねぇよ!!!一体なんだよあんたら、マジで!!マジであんたらヤバイよ!!!!!」